日記の補集合

日記であったりなかったりする

森見登美彦『熱帯』を読んで

寒さがいよいよ厳しくなってきました。師走というだけあって、僕の身の回りも実に慌ただしくなり、慌ただしいのを好まない僕からすると、何となく居心地の悪い日々が続いています。慌ただしさの原因を辿ると、年明け早々に行われる「センター試験」なるものに行き着きます。どうやらこれが諸悪の根源らしいです。皆様も冬の寒さとセンター試験にはお気をつけください。

閑話休題。僕は今、最近読んだ本の感想でも書き残しておこう思い、受験勉強を措いて筆を取っている次第であります。

 

熱帯

熱帯

 

 

『熱帯』は僕が愛好するところである森見登美彦の久しぶりの新刊だったので、是非買おうと思っていました。しかしながら、11月の僕は財産の全てを『やがて君になる』の単行本に費やしていたので、発売後暫くしてから購入しました。

『熱帯』は実に不思議な小説でした。そもそも『熱帯』というのは、この小説の中に登場する小説のタイトルです。この小説は小説を巡る小説なのです。ここにまず、大きな入れ子構造があります。そしてかくのごとき入れ子構造が、『熱帯』という一冊の小説を巡って綿々と続いていきます。読み進めていくうちにその構造の複雑さに混乱し、謎は次第に増えていきます。そして、物語を巡る物語は多くの謎を含んだまま幕引きを迎えます。謎は謎のまま楽しめということでしょうか。何にせよ、読んでいる間は非常に楽しく、読んだ後は不思議な気分にさせられる小説でありました。気が向いた時に再読すればまた見方も変わるかも分かりません。是非皆様もご一読ください。